【複素数1】10^n+iの因数と(非)接続数の一対一対応

はじめに

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概要:【はじめに】588^2+2353^2=5882353 と 分数 1/17 = 0.5882352... - dedemoni's mathematics

前回:【循環小数4】すさまじい桁の接続数 - dedemoni's mathematics

 

いままでの要約と今回の目標

循環小数編を読んでないor忘れた人向けに重要部分を復習します!

\boldsymbol{5882353} という数字は

 \boldsymbol{588^2}  \boldsymbol{+}  \boldsymbol{2353^2}  \boldsymbol{=}  \boldsymbol{588}\boldsymbol{2353}

のように二乗の和が合体する接続数です。

 

また、接続数

\boldsymbol{\cfrac{1}{17}}\boldsymbol{=0.0}\boldsymbol{5882352}\boldsymbol{94117647}\boldsymbol{0588...}

のように分数の循環小数に出てくるという性質もがあります!
循環小数編ではこの理由について考えていきました。


接続数は二乗の和が合体する数なので

\boldsymbol{x^2+y^2=10^nx+y} 自然数にほかなりません。

この方程式は円の式なので対称性より整数解は4つ同時に出てきます。

このとき、解同士には下の関係式がありました。

4つの対の解どうしの関係式

(x,y)=(a.b), (c,b), (c,d), (a,d)x^2+y^2=10^nx+y の整数解のとき

a+c=10^n,  \;\;\;\;  b+d = 1

 

  s, u, v, t を下のように  a, b, c, d最大公約数とします。

 s=\gcd( a, b ),\; t=\gcd(c, d) , \; u =\gcd(a, d) ,\; v=\gcd (c, b)

このとき、下三つの関係式が成り立ちます。

関係式
 a = su,\:\;b=sv,\:\: c=tv,\:\; d=-tu
 (s^2+t^2)(u^2+v^2)=10^{2n}+1
 \cfrac{s^2}{s^2+t^2}=  \cfrac{a}{10^n}+\cfrac{b-1}{10^{2n}}+\cfrac{c}{10^{3n}}+\cfrac{d-1}{10^{4n}} +\;...


三つ目の式より、接続数が分数の循環小数に出てきた理由を説明できました!

具体例を見てみましょう。

 n=2 のときの接続数は

12^2+33^2=1233

88^2+33^2=1233 の二つであるので

a^2+b^2=100a+b

c^2+b^2=100c+b より

a=12,b=33,c=88 です。

また、b+d = 1 より d=-32 です。

  s=\gcd( 12, 33 )=3,\; t=\gcd(88, -32)=8 , \; u =\gcd(12, -32)=4 ,\; v=\gcd (88, 33) =11

となります。

このとき先ほどの三つの関係式が成り立っています。

 a = su,\:\;b=sv,\:\: c=tv,\:\; d=-tu

 (3^2+8^2)(4^2+11^2)=10001

\cfrac{9}{73}=0.12328767... すなわち

 \cfrac{3^2}{3^2+8^2}=  \cfrac{12}{10^2}+\cfrac{32}{10^{4}}+\cfrac{88}{10^{6}}+\cfrac{-33}{10^{8}} +\;... 

 

詳しくはこの目次からご覧ください。

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このように循環小数編では  a, b, c, d s, u, v, t の関係性を見ていきました。

もっとその関係を深掘りしていくと、複素数を用いることで接続数を簡単に求められることがわかるので最初にそれを解説します!

 

そしてその関係は一般の円でも成り立ち、さらに複素数平面に応用すると円の格子点はたまたま整数になった点の集まりではなくものすごく精巧に配置されていることが判明します!

これは後編の【代数・幾何編】の入り口となる話でもあります。

 

 

逆に s,t,u,v から a,b,c,d が得られるか

いままではまず、a,  b, c,  d が先にあってその後に s, t, u, v が定まっていました。次は逆に s, t, u, v から a,  b, c,  d を求められるか考えていきます!

 

a = su,\,b=sv,\, c=tv,\, d=-tu   だとわかったから

(s^2+t^2)(u^2+v^2)=10^{2n}+1  から出るんじゃないか?

と思うかもしれません。

しかし、これらの式は s, t, u, v  s=\gcd( a, b ),\,t=\gcd(c, d) , \, u =\gcd(a, d),\,v=\gcd (c, b) と定めたときに成り立つ式です。

 

例えば、初めて (3^2+8^2)(4^2+11^2)=10^{4}+1 という式を見たとしたら、これらは対称なのでどれが s でどれが u かわかりませんし、どの二つをかければ b になるのか判別できません。

二つの積を x^2+y^2=10^nx+y に代入していけばいずれ分かりますが、計算せずともわかりたいものです。

今の段階では、二数を選んでかけたとき正しく b になる確率は \cfrac{1}{4} ですがこれを 100% にしたいです。

ここで複素数が使えます!

 s^2+t^2 複素数を用いれば  s^2+t^2 =(s+ti)(s-ti) と変形できますよね。

このように  10^{2n}+1=(s^2+t^2)(u^2+v^2) (10^n+i)(10^n-i)=(s+ti)(s-ti)(u+vi)(u-vi) と変形できます!

 

このとき 10^n+i がどうなるか考えましょう。

10^n-i共役な複素数になることを考えると、 (s+ti)(s-ti) から一方、 (u+vi)(u-vi)から一方を選んでかけた積 10^n+i=(s \pm ti)(u \pm vi) になりそうです。

ここで、例えば  xy = 3 の整数解を求めると、  x=\pm 1, \pm 3 と   \pm が付いたことを考えると、 10^n+i もそれに似たものを付けなければなりません。この複素数の場合 1,i,-1,-i のいずれかが付きます。

そのため 10^n+i= i^m(s \pm ti)(u \pm vi) になります!m0,1,2,3 のいずれかだと思ってください。

ちなみにここでの  i^m は単数と呼びます。
この単数の存在は x^2+y^2=10^nx+y に必ず四つのセットで解が出てくる理由になっています。詳しくは後編で!

 

 10^n+i= i^m(s \pm ti)(u \pm vi) になるとわかりました!

つまり

 10^n+i= i^m(s + ti)(u + vi)

 10^n+i= i^m(s - ti)(u + vi)

 10^n+i= i^m(s + ti)(u - vi)

 10^n+i= i^m(s - ti)(u - vi)

つのうちの一つ、つまり\boldsymbol{\cfrac{1}{4}} です!

この四つのうちどれになるかを先に決めてしまえばわかれば、 s, t, u, v 100% 確定できそうです。

 

n=2 でどうなるのか見てみましょう!

10^{4}+1=(3^2+8^2)(4^2+11^2) だったので

10^{2}+i3+8i で割ってみましょう!

\cfrac{10^2+i}{3+8i}=\cfrac{(10^2+i)(3-8i)}{(3+8i)(3-8i)}=\cfrac{308 - 797i}{73} これはハズレみたいですね。

3-8i で割ると

\cfrac{10^2+i}{3-8i}=\cfrac{(10^2+i)(3+8i)}{(3+8i)(3-8i)}=\cfrac{219 +803i}{73}=4+11i

割り切れました! 
10^2+i=(3-8i)(4+11i) だとわかりました!

n=3, 4 のときはそれぞれ

10^3+i=(10-i)(99+10i)

10^4+i=(1-4i)(588+2353i)

因数分解できます!

三つとも下の形になりますね!

10^{n}+i=(s-ti)(u+vi)

 

 

実は全てこの形で表せられます!それを示します。

 a+c= 10^n, \; b+d = 1

規則2 a = su,\,b=sv,\, c=tv,\, d=-tu より

 su+tv= 10^n, \; tv-tu = 1    

後者の両辺に i をかけて前者に加えます

 su+tv+(tv-tu)i =10^n+i

因数分解します

(s-ti)(u+vi)=10^n+i

このようにして導出できました!

ちなみにここで共役の複素数をとると、

(s+ti)(u-vi)=10^n-i  

になり、これを両辺にかけると

(s^2+t^2)(u^2+v^2)=10^{2n}+1

となって規則3も証明できます。

 

これで、s, t, u, v が一通りに定まるので s, t, u, v から a,  b, c,  d を求めることが出来ます!

すなわち、10^n+i二つの複素数の積にすることができたらすぐに接続数がわかります。これが新しい接続数の求め方です!

また、複素数も整数のように素因数分解できます。

したがって、10^n+i を二つの複素数の積で表すパターンを全て求めることができるのでn桁の解は全て求めることができます!

複素数素因数分解なんて聞いたことがないと思いますが、次の例で実際に求めながら説明していきます!

 

5桁の解を全て求めてみよう!

x^2+y^2=10^5x+y \; ...(8) の整数解を求めます。

10^{10}+1=101 \times 3541 \times 27961  = (10^2 +1^2)(54^2+25^2)(144^2+85^2) と素因数を二乗の和で表せます。

先ほどのように割り切れるか調べることで、

10^5+i = (10+i)(54+25i)(144-85i)

であることがわかります。

これが複素数素因数分解です!そんなに難しくないですね。

 

10^5+i を二つの積で表す方法は次の三通りが考えられます!

(i)  (54+25i)(144-85i) \;\;  | \;\;  (10+i)

(ii)  (10+i)(144-85i) \;\;  | \;\;  (54+25i)

(iii)  (144-85i) \;\;  | \;\;  (10+i)(54+25i)

それぞれ計算すると

(i)  (9901 - 990 i )   \;\;  | \;\;  (10+i)

(ii)  (1525 - 706 i) \;\;  | \;\;  (54+25i)

(iii)  (144-85i) \;\;  | \;\;  (515 + 304 i)  

になります!ちゃんと符号がマイナス、プラスの順になってますよね!

 (s-ti) \;\;  | \;\;  (u + v i)   のとき、 (8) の解は規則2より

(x,y) =(su, sv) , (tv, sv),  (su, -tu), (tv, -tu) になります。

 

(i), (ii), (iii) の場合もこれに代入すると

(i) (x,y) =(99010, 9901) , (990, 9901),  (99010, -9900), (990, -9900)

(ii) (x,y) =(82350, 38125), (17650, 38125), (82350, -38124), (17650, -38124)

(iii) (x,y) =(74160, 43776) , (25840, 43776),  (74160, -43775), (25840, -43775)

 

とても簡単に求まりました! 
ですが、(0, 0), (0,1) などの
自明の解があるのでそれも求めます。

10^5+i = (1-0i)(10^5+i ) というように見ることができるので

(x,y) =(10^5, 1) , (0, 1),  (10^5, 0), (0, 0) の四つの自明の解がでてきます!

これで  (8) の解はすべて出そろいました!

 

82350^2+38125^2=82350+38125 のような新たな接続数6つも得ることが出来ました。

 

一般に 10^{2n}+1 の素因数が m 個のとき、10^n+i を二つの積で表す方法は 2^{m-1} であり、 全て2ペアで接続数がででくるので自明な解を除いた接続数の数は \boldsymbol{2^m-2} になります。

 

この方法が桁数を指定したときの接続数の求め方として最も優秀だと思っています!

 

こうして5桁の解を全て得られたわけですが、これらの解 (x,y) をxy平面にプロットすると下のようになります。

(0,0)(0,1)(10^5,0)(10^5,1) は近すぎて被っています。


この点同士を直線で結ぶとこのように平行な線が沢山見えてきます!

この格子点(整数解のこと)の平行関係は接続数のみならず一般の円で成り立つので、次からは今回の話を一般化してからこの性質を説明していきます!