【循環小数1】接続数と分数のただならぬ関係

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概要:【はじめに】588^2+2353^2=5882353 と 分数 1/17 = 0.5882352... - dedemoni's mathematics

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前回の振り返りと今回の目標

前回を振り返ります!

\boldsymbol{5882353} という数字は

 \boldsymbol{588^2}  \boldsymbol{+}  \boldsymbol{2353^2}  \boldsymbol{=}  \boldsymbol{588}\boldsymbol{2353}

のように二乗の和が合体する接続数であり、

\boldsymbol{\cfrac{1}{17}}\boldsymbol{=0.0}\boldsymbol{5882352}\boldsymbol{94117647}\boldsymbol{0588...}

という分数の循環小数に出てくるという特殊な性質もがあります!

この理由を探るため、

\boldsymbol{x^2+y^2=10^nx+y} 自然数

を求めて他の接続数を得ました!

n = 4 の時は 10^8+1=17 \times 5882353 =(1^2+4^2)(588^2+2353^2) の変形を利用することで下の4つの整数解を得ることが出来ました。

588^2+2353^2 = 5880000+2353= 5882353

9412^2+2353^2 =94120000+2353 = 94122353

588^2+(-2352)^2 = 5880000-2352 = 5877648

9412^2+(-2352)^2 =94120000-2352 = 94127648

前半二つは自然数解なので接続数になりますが、後半二つは負の解で接続しないので、非接続数と呼びました。

また、接続数非接続数をまとめて(非)接続数と呼びます。

 

最後に \cfrac{1}{17}=0.0588235294117647...

接続数 5882353 だけではなく

非接続数 94117648 にもなぜか似ていることを紹介しました。

この理由を説明するのがひとまずの目標です。

そしてその最中、接続数は美しい構造していることが分かってきます!

この構造はまだ未発見のようですが、分かりやすく並べることでもしかしたら小学生でも気が付けるほど単純明快で簡単な構造なので、次回にクイズとして出してみました!

その時はぜひ考えてみてください!

この構造によって循環小数に接続数 5882353 が出てきた理由も説明できます!

 

(非)接続数と分数

循環節の長さ

\cfrac{1}{17}=0.0588235294117647...

この式を観察したらなにかわかるでしょうか。

この式から次の3つがわかります。

(Ⅰ) 循環節(循環する部分)の長さは  16n = 44

(Ⅱ) 循環節の長さは  16 = 17-1  

(Ⅲ) 05882352 + 94117647 = 99999999

調べたら (Ⅱ) (Ⅲ) は一般の小数の性質だとわかりました!

それぞれ説明します。

 

(Ⅰ) 循環節(循環する部分)の長さは  16n = 44

x^2+y^2=10^nx+y  の解 x,y はどちらも n 桁であることがわかったので、 10^nx+y は、 2n 桁 でそれを二つ接続しているため長さは 4n のになります。

 

(Ⅱ) 循環節の長さは  16 = 17-1  

一般に素数 p の逆数 \cfrac{1}p の循環節の長さは p − 1約数になるそうです!

 

(Ⅲ) 05882352 + 94117647 = 99999999

一般の小数は循環節を半分に分けて足すと位が全て9になります。ほんとでしょうか。

ためしに、\cfrac{1}7=0.142857... でやってみると

確かに 142+857=999 です!

小数って不思議ですね。

 

ここからしばらく脱線します。

カプレカ数

この \cfrac{1}7 の循環節 142857 は次のような性質があります。

142857 \times 1=142857
142857 \times 2=285714
142857 \times 3=428571
142857 \times 4=571428
142857 \times 5=714285
142857 \times 6=857142

142857 という数字が順序はそのままクルクル回転しています!

このような数はダイヤル数と呼ばれています。循環節とダイヤル数には密接な関わりが知られています。詳しくは下の本をご参照ください。先ほどの (Ⅱ) (Ⅲ) などといった小数にまつわる様々な不思議も書いてあります!

『素数はめぐる 循環小数で語る数論の世界』(西来路 文朗,清水 健一):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部

 

142857 はもう一つ面白い性質があります。

142857^2=20408122449

20408+122449=142857

すごい!このように二乗した数を真ん中で二つに分けて足すと元に戻るという性質があります!

このような数をカプレカ数と言います。

\cfrac{1}{17} の循環節の 0588235294117647カプレカ数にはなりません。しかし、先頭の 05 を後ろに回した循環節 8823529411764705カプレカ数になります!

8823529411764705^2 

=  77854671280276801038062283737025

7785467128027680 + 1038062283737025

= 8823529411764705 

成り立ってますね!

そしてこの 8823529411764705 という数字は 0588235294117647 を丁度 15 倍した数になります。この数もダイヤル数なので  88.. が先頭にくるように回転するのが 15 倍した時なのですね。

つまり、\cfrac{15}{17} = 0.8823529411764705...  ということですが、こんな感じで他にも \cfrac{5}{11} \cfrac{7}{13} \cfrac{14}{19}   の循環節はカプレカ数になります!

 

このように素数 p は(その逆数 \cfrac{1}{p} の循環節と互いに素ならば)

\boldsymbol{\cfrac{k}{p}} の循環節がカプレカ数になるような \boldsymbol{ k \; (  \lt   p ) } がただ一つ存在します!!!

すごい!!!

p が一万以下の素数のときは、逆数の循環節と互いに素でないのは 3487 の二数しかありませんでした。

それ以上の計算は逆数が一万桁を超えてくるので計算を断念しましたが大きな素数ほど互いに素になりやすいので、この二数以外のほとんどの素数は逆数の循環節と互いに素になると考えられます。

つまり、ほぼ全ての素数の逆数の循環節は整数倍するとカプレカ数になります!

素数の逆数にこんな性質があるなんて驚きですね。

 

これは既に誰かしら見つけてそうなものですがなぜか調べても出てこなかったです。

カプレカ数はこの事実があることで格段に面白く感じるのでこれが知られていないのは残念です。

カプレカ数については数遊び編4でまた取り上げます。

 

結局、数式を観察して得た (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ) からは小数の面白さはわかりましたが、分数の循環節になぜ接続数が現れたのかの突破口は見つかりませんでした。

そこで今度は逆に、他の接続数を循環節にもつ分数はどんな分数なのか考えてみましょう!

 

対となる分数

x^2+y^2=10^nx+y  の整数解は上図の対称性より必ず4セットで現れます。n=4 のときは  a=588   a=9412 のどちらでもいいですが、 a=588 とすると  

\begin{cases} a=588\\ b=2353 \\ c= 9412 \\ d =-2352 \end{cases}

であることがわかります。

以降、この  a, b,c, d の文字は多用していきます。

 a, b,c \gt 0 d \lt 0 であることと、 a,c  x の値で b, d y の値であることは覚えておいてください。

 

この a, b, c ,d を用いると、

\begin{cases} a^2+b^2 =5882353\\ c^2+b^2=94122353 \\ a^2+d^2 = 5877648 \\ c^2 +d^2 = 94117648 \end{cases}

となり、

\cfrac{1}{17}=0.0588235294117647... より

\cfrac{1}{17}循環小数部分は   \boldsymbol{a^2+b^2-1} \boldsymbol{c^2+d^2-1}接続した数になっています。

 

そして、仮に分数が接続数になる性質が一般に成り立つならば

 a c は対になっていて対称であるため、その二つを入れ替えても同じその性質をもつので 

 \boldsymbol{c^2+b^2-1} \boldsymbol{a^2+d^2-1} を接続した  9412235205877647循環小数となる分数が必ずあるはずです。

その分数が問題解決の糸口になりそうです!

 

どんな分数がその循環小数になるでしょうか。

10^8+1=17 \times 5882353 から \cfrac{1}{17}  が出てきたのでもう片方の 5882353 を分母に持つ \cfrac{N}{5882353} がその循環小数を持つと仮定します。

 \cfrac{N}{5882353} \fallingdotseq 0.9412235205877647 より  N を求めると、

 N \fallingdotseq 5536608.9999999994463391 となります。

 

ほとんど整数になりました!

 \boldsymbol{N = 5536609} で確定でしょう!

つまり、 \cfrac{5536609}{5882353}  の循環節は  \boldsymbol{c^2+b^2-1} \boldsymbol{a^2+d^2-1} を接続した数になるわけです。

 

とはいえこの 5536609 という数字、いったい何なのでしょうか......

 

5536609という数字の正体

そもそもなぜ、\cfrac{1}{17} の分子は 1 だったのでしょうか。

実は 1 という数字はこの記事内で \cfrac{1}{17}  以外に一箇所だけ使われていました。

この数式を覚えているでしょうか。

17 \times 5882353 = (1^2+4^2)(588^2+2353^2)

この数式は4桁の解を求める途中に用いた式でした。
赤い数字1 になっています!

仮に \cfrac{1}{17} の分子が  17=1^2+4^2 の  \boldsymbol{1^2} のことだったとしたら
\cfrac{5536609}{5882353} の分子は 5882353=588^2+2353^2 より \boldsymbol{588^2}\boldsymbol{2353^2} のどちらかでしょう!

実際に計算すると、

 

\boldsymbol{\sqrt{5536609} = 2353}

 

ビンゴです!

予想は正しかったですね。

 

同様に4^2588^2 が分子にくる場合も計算してみましょう!

\cfrac{4^2}{17}=0.9411764705882352 より

c^2 +d^2-1 a^2+b^2-1 を接続した値になっています。

 

\cfrac{588^2}{5882353}=0.0587764794122352 より

a^2 +d^2-1 c^2+b^2-1 を接続しています。

 

どうやらどの循環小数接続数と非接続数を接続しているようですね。

 

試しに x^2+y^2=10^2x+y のときもやってみましょう!

10^4+1 = 73\times 137 =(3^2 + 8^2)(4^2+ 11^2)

でしたので、分数を計算すると

\cfrac{3^2}{73}=0.12328767...

\cfrac{8^2}{73}=0.87671232...

\cfrac{4^2}{137}=0.11678832...

\cfrac{11^2}{137}=0.88321167...

となります。x^2+y^2=10^2x+y の自明でない整数解は

a^2+b^2 =12^2+33^2 =1233

c^2+b^2 =88^2+33^2=8833

a^2+d^2 =12^2+(-32)^2 =1168

c^2+d^2 =88^2 +(-32)^2 =8768

 

になるので、やはり循環小数は接続数と非接続数からなっていることがわかります。ここでは  a=12 としています。

 

また、分母が等しい分数同士は接続数と非接続数が同じで順番だけ入れ替わっていることも読み取れます。

 

今までに得られた結果をまとめます!

結果1

対になっている
接続数 a^2+b^2 と非接続数  c^2+d^2
(接続数  c^2+b^2 と非接続数  a^2+d^2
について、それらを求める際に出てくる途中式を
10^{2n}+1 = (s^2+t^2)(u^2+v^2)
としたとき s, t をうまく選ぶと

\cfrac{s^2}{s^2+t^2} 循環小数部分が
 a^2+b^2-1   c^2+d^2-1 
 c^2+b^2-1   a^2+d^2-1
を接続した数になる 。

ただし接続する順序は問わない。


少しずつですが分数と(非)接続数の関係が見えてきましたね!

 

結果1を数式で表してみましょう!

\cfrac{3^2}{73}=0.1232876712328767... のときは

\cfrac{3^2}{73}=\cfrac{1233}{10^4}+\cfrac{8767}{10^8}+\cfrac{1233}{10^12}+\cfrac{8767}{10^16}+...

と無限和で表せるため、

\cfrac{3^2}{73}=\cfrac{12^2+33^2 -1}{10^4}+\cfrac{88^2+(-32)^2 -1}{10^8}+\cfrac{12^2+33^2 -1}{10^{12}}+\cfrac{88^2+(-32)^2 -1}{10^{16}}+...

になります。

一般には、x^2+y^2=10^nx+y の4対の整数解 a,b,c,d について

 

 \boldsymbol{ \cfrac{s^2}{s^2+t^2} =  \cfrac{a^2+b^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{c^2+d^2-1}{10^{4n}} + \cfrac{a^2+b^2-1}{10^{6n}}+\cfrac{c^2+d^2-1}{10^{8n}}+\;...}

 

が成り立ちます!この式が導出すべき式ですね!

分母が、10^{2n} ずつ増えているのは、a^2+b^2c^2+d^22n桁になるからです。

 

このように、(非)接続数を求める際に出てくる途中式、10^{2n}+1 = (s^2+t^2)(u^2+v^2)s, t, u, v が実は重要な数だということがわかりました。

次回はこれら s, t, u, v a, b , c, d の間にある隠れた関係を見ていきます!

この関係は接続数で最も重要な性質だと思っています!

そして、この関係を用いることで分数と接続数の関係式も導出することができます!

お楽しみに~

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