【循環小数3】分かったことを導出していく回

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概要:【はじめに】588^2+2353^2=5882353 と 分数 1/17 = 0.5882352... - dedemoni's mathematics

前回:【循環小数2】IQテスト風クイズで接続数の隠れた法則を見つけよう!

 

今回は前回 前々回で分かったことを導出していきます!

導出していく順序はこんな感じです!

(1)

a,b,c,dx^2+y^2=10^nx+y  の4つの整数解としたとき、

 a = su,\:\;b=sv,\:\: c=tv,\:\; d=-tu を満たす 自然数 s,t,u,v が存在する。

(2)
このとき、  s=\gcd( a, b ),\; t=\gcd(c, d) ,  u =\gcd(a, d) ,\; v=\gcd (c, b) である。

(3)
さらに、(s^2+t^2)(u^2+v^2)=10^{2n}+1 を満たす。

(4)
  \cfrac{s^2}{s^2+t^2} =  \cfrac{a^2+b^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{c^2+d^2-1}{10^{4n}} +\;...

  \cfrac{t^2}{s^2+t^2} =  \cfrac{c^2+d^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{a^2+b^2-1}{10^{4n}} +\;...

  \cfrac{u^2}{u^2+v^2} =  \cfrac{a^2+d^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{c^2+b^2-1}{10^{4n}} +\;...

  \cfrac{v^2}{u^2+v^2} =  \cfrac{c^2+b^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{a^2+d^2-1}{10^{4n}} +\;...

(4)は前回の

  \Bigl(\;  \cfrac{s^2}{s^2+t^2} \; | \,a,b,c,d \Bigr)

  \Bigl(\;  \cfrac{t^2}{s^2+t^2} \; | \,c,d,a,b \Bigr)

  \Bigl(\;  \cfrac{u^2}{u^2+v^2} \; | \,a,d,c,b \Bigr)

  \Bigl(\;  \cfrac{v^2}{u^2+v^2} \; | \,c,b,a,d \Bigr)

を数式にしたものです。

始めの疑問である、 \cfrac{1}{17}=0.0588235294117647...なぜ二つの(非)接続数からなるのかという問いも上の式が成り立つからだと回答できます!

 

(1)の導出

 a,b,c,dx^2+y^2=10^nx+y  の4つの整数解としたとき、

 a = su,\:\;b=sv,\:\: c=tv,\:\; d=-tu を満たす 自然数 s,t,u,v が存在する

a,b は定義より下の式を満たします。
 a^2+b^2 =10^na+b  この式を変形します。
-10^na+a^2 = b -b^2     
 -a(10^n-a) = b(1-b)   
ここで、 a,b,c,d 間の関係式  a+c = 10^n, b+d = 1 を用いると
 \boldsymbol{ac=-bd}  となります!
 
シンプルになりました!
 a, b, c, d にはこんなきれいな関係もあったんですね!
 
n=2 のときだと  12 \times 88 = 33 \times 32 = 1056 で確かに成り立っています!
 
 ac=-bd = e として、下の図の枠線内には  e の全ての(正の)素因数があって、全てかけると  e となるとします。
(下図だと  e=p_1p_2p_3p_4p_5p_6

 a \times c= e であったから 枠線内の領域を下のように  a 領域と  c 領域の二つに分けることが出来ます。

(下図だと  a=p_1p_2, c= p_3p_4p_5p_6

 

 b \times (-d) = e であったから同様に領域を  b 領域と  -d 領域の二つに分けることも出来ます。

(下図だと  b=p_1p_3p_4, -d= p_2p_5p_6


したがって領域は 「 a 領域かつ  b 領域」、「  a 領域かつ -d 領域」、「  c 領域かつ b 領域」、「 c 領域かつ  -d 領域」の四つに分けることが出来ます。これらは二数の公約数の領域になります。

この領域を先ほど言った順に  s, u, v, t とすると、   \boldsymbol{a = su,\:\;b=sv,\:\: c=tv,\:\; d=-tu} が成り立つことがわかるでしょう!

 

s,t,u,v 領域は最大公約数にはならないの?と思うかもしれませんが、もし s,t 間、もしくは u,v 間に公約数 p_1 があったら、二つの p_1が矢印の向きに同時に動いても  a,b,c,d の値は変わりません。したがって、このように  s, u, v, t 領域の値は変動する可能性があるので最大公約数という一定値とはなりません。

 

(2)の導出

 s=\gcd( a, b ),\; t=\gcd(c, d) ,  u =\gcd(a, d) ,\; v=\gcd (c, b)  

関係式 b+d=b-(-d) = 1 より、 b と  -d は連続した数であるとわかります。連続した数は互いに素なので svtu が互いに素であるとわかります。すなわち st の二数、 uv の二数が互いに素になります。

したがって、下の4式が成り立ちます。

 

\gcd(a,b) = \gcd(su,sv) = s            

(uv が互いに素より)

\gcd(c,-d) = \gcd(tv,-tu) = t 

(uv が互いに素より)

\gcd(a,-d) = \gcd(su,-tu) = u

(st が互いに素より)

\gcd(c, b) = \gcd(tv,sv) = v

(st が互いに素より)

 

(2)終わり!

(3)の導出

(s^2+t^2)(u^2+v^2)=10^{2n}+1 

 a^2+c^2+b^2+d^2 = 10^n(a+c)+(b+d)

ここで、【数遊び編1】にて導出した関係式  a+c=10^n, b+d=1 を用いると

 a^2+c^2+b^2+d^2 =10^{2n}+1 となります。

 

 ac=-bd より、 \pm 2ac \pm 2bd=0 なのでこれを上式に辺々加えると

 a^2 \pm 2ac + c^2+b^2  \pm 2bd+ d^2 =10^{2n}+1 

 (a \pm c)^2 + (b \pm d)^2 =10^{2n}+1 

 a = su,\:\;b=sv,\:\: c=tv,\:\; d=-tu より

 (su \pm tv)^2 + (sv \mp tu)^2 =10^{2n}+1 

 

ここでブラーマグプタの二平方和恒等式

(su \pm tv)^2+(sv \mp tu)^2=(s^2+t^2)(u^2+v^2) より

\boldsymbol{(s^2+t^2)(u^2+v^2)=10^{2n}+1} 

 

(3)終わり!

(4)の導出

  \cfrac{s^2}{s^2+t^2} =  \cfrac{a^2+b^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{c^2+d^2-1}{10^{4n}} +\;...

  \cfrac{t^2}{s^2+t^2} =  \cfrac{c^2+d^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{a^2+b^2-1}{10^{4n}} +\;...

  \cfrac{u^2}{u^2+v^2} =  \cfrac{a^2+d^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{c^2+b^2-1}{10^{4n}} +\;...

  \cfrac{v^2}{u^2+v^2} =  \cfrac{c^2+b^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{a^2+d^2-1}{10^{4n}} +\;...

(s^2+t^2)(u^2+v^2)=10^{2n}+1  より

 \cfrac{1}{s^2+t^2}=\cfrac{u^2+v^2}{10^{2n}+1}

 s^2 を両辺にかけて

 

 \cfrac{s^2}{s^2+t^2}=\cfrac{(su)^2+(sv)^2}{10^{2n}+1}

 a = su,\:\;b=sv,\:\: c=tv,\:\; d=-tu より

 

 \cfrac{s^2}{s^2+t^2}=\cfrac{a^2+b^2}{10^{2n}+1}

下が公比  -\cfrac{1}{10^{2n}} の無限等比級数の和になっており、これは収束して上の式になります。ここではその逆に進みます。

 \cfrac{s^2}{s^2+t^2}=\cfrac{a^2+b^2}{10^{2n}}-\cfrac{a^2+b^2}{10^{4n}}+\cfrac{a^2+b^2}{10^{6n}}-\cfrac{a^2+b^2}{10^{8n}} + \;....

ここで

 a^2+c^2+b^2+d^2 =10^{2n}+1 を変形した

 a^2+b^2=10^{2n}+1-c^2-d^2 を右辺の偶数項に代入して

 

 \cfrac{s^2}{s^2+t^2}=\cfrac{a^2+b^2}{10^{2n}}-\cfrac{10^{2n}+1-c^2-d^2}{10^{4n}}+\cfrac{a^2+b^2}{10^{6n}}-\cfrac{10^{2n}+1-c^2-d^2}{10^{8n}} +\;....

少し整えると

 \boldsymbol{ \cfrac{s^2}{s^2+t^2} =  \cfrac{a^2+b^2-1}{10^{2n}}+\cfrac{c^2+d^2-1}{10^{4n}} + \cfrac{a^2+b^2-1}{10^{6n}}+\cfrac{c^2+d^2-1}{10^{8n}}+\;...}

導出することが出来ました!

 

他三つも同じ方法で導出できます!

 

また a^2+b^2-1=10^na+b-1 を代入すると、

 \cfrac{s^2}{s^2+t^2}=  \cfrac{a}{10^n}+\cfrac{b-1}{10^{2n}}+\cfrac{c}{10^{3n}}+\cfrac{d-1}{10^{4n}} +\;...

と非常に簡素で美しくなります!同様にして下三式も導けます!

 \cfrac{t^2}{s^2+t^2}=  \cfrac{c}{10^n}+\cfrac{d-1}{10^{2n}}+\cfrac{a}{10^{3n}}+\cfrac{b-1}{10^{4n}} +\;...

 \cfrac{u^2}{u^2+v^2}=  \cfrac{a}{10^n}+\cfrac{d-1}{10^{2n}}+\cfrac{c}{10^{3n}}+\cfrac{b-1}{10^{4n}} +\;...

 \cfrac{v^2}{u^2+v^2}=  \cfrac{c}{10^n}+\cfrac{b-1}{10^{2n}}+\cfrac{a}{10^{3n}}+\cfrac{d-1}{10^{4n}} +\;...

 

d は負であるから循環小数はそのまま a,b,c, d を連結した数にはならないことを注意してください。

 

これにて  \boldsymbol{\cfrac{1}{17}}になぜ(非)接続数が絡んできたのかについての説明は終わります。

次回は、この事実を利用してものすごい桁の接続数を求めます!お楽しみに!

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